セリオレポート

<対象者> 企業技術者、知財

 

 

1.選択発明とは


 選択発明とは、簡単に言えば、先行発明に上位概念が記載され、対象となる発明が、その下位概念の全部又は一部に相当する発明です。下位概念に限定すると、上位概念で記載された先行発明とは異なる技術になることが条件であるため、主に化学分野特有のものと考えられます。

 

 

2.選択発明の具体例


化学物質の場合と、数値限定の場合が主に考えられます。

(1)化学物質の場合

  ・先行発明:ある化合物の置換基としてアルキル基とハロゲン原子を有する

  ・選択発明:上記と同じ化合物母体で、炭素数5~8のアルキル基を有し、臭素化された化合物。先行発明に、具体的にこの組み合わせの記載がないこと。

(2)数値範囲の場合

  ・先行発明:化合物AとBの混合物からなる潤滑剤(実施例、比較例はAが10~60質量%の範囲のみ)

  ・選択発明:化合物AとBからなり、Aが90~95質量%である酸化防止剤

 

 

3.選択発明の進歩性が認められる条件


(1)先行発明に記載された範囲内でありながら、先行発明の実施例、比較例には具体的には記載されていないことが必要です。

(2)効果についての判断性は、通常の進歩性と同様です。先行発明と比較して異なる効果(上記2(2)のように潤滑剤と酸化防止剤。)又は同じ種類の効果であれば、顕著な効果が必要です。いずれの場合でも、先行技術の記載に基づいて容易でないことも必要です。

 

 

4.選択発明の利用方法


 他社の類似出願や自社の出願があっても、あきらめずに、その範囲内の選択発明取得や、改良発明(第3成分追加、特定のパラメータ発見)取得を目指してください。

 選択発明は、先行発明から得られた特許権の範囲内となる場合もありますが、良い選択発明であれば

 ・先行発明の権利者とクロスライセンスを結ぶ

 ・実質先行発明の権利者の実施を排除できる

などのメリットが得られることもあります。

 

 

参考

特許・実用新案 審査基準 第Ⅲ部第2章第4節 7.選択発明

 

 

以上

(記:松尾 由紀子)