1. はじめに
企業の知財部の方や、技術者の方の中には、ご自身でクレームを書いてみたい方もいらっしゃると思います。その一方で、企業内には、明細書作成経験者がいない場合も多く、企業内で、クレームの記載に関するスキルを伸ばすことが難しい場合が多々あります。
ここでは、周りに、明細書作成経験者(以下、「経験者」)がいない場合でも、クレーム(特許請求の範囲)を書けるようになる方法をご提案したいと思います。
2. クレーム作成の特徴
クレームは、大きくわけて、次の2つのステップにより作成されます。
(1)発明を捉える
(2)捉えた発明を文章化する。
クレームの作成にあたっては、(1)も難しいですが、(2)の文章化がとても難しいです。
(2)については、周りに経験者がいない場合、自身が書いたクレームが良いか悪いかも分かりません。ここでは、経験者がいない場合でも、書いたクレームが良いか悪いかを見極める方法((2)の文章化を習得する方法)をご提案したいと思います。
3. クレームの良し悪しを見極める方法
クレームの良し悪しは、「第三者に発明を説明しない状態で、この第三者にクレームのみを見てもらう」ことで判断できるようになります。言い換えると、予備知識を第三者に一切与えない状態で、クレームのみをこの第三者に見てもらってください。
そして、この第三者にクレームを見てもらった後、この第三者が把握した発明を、この第三者から聞いてみてください。
もし、聞いた内容と発明の内容とが一致すれば、(2)の文章化が正しくできていると言えます。
一方で、聞いた内容と発明の内容とが一致していない場合は、(2)の文章化が正しくできていないことになります。
ポイントは、クレームを読んでもらう第三者に、「発明の内容を説明しないこと」です。
発明を説明して予備知識を与えてしまうと、クレームをそれなりに読めてしまうため、表現が不正確でも見過ごされがちです。発明の内容を説明せずに、クレームを見てもらってください。
以上のやり方は、周りに経験者がいなくても出来ますので、是非試してみてください。
4. 外部の弁理士に添削してもらう
外部の弁理士による添削も、文章化についてのスキルアップには有効です。
但し、添削を依頼するにあたっては、上記(1)、(2)の何れの観点で添削してもらうかを明確に伝えたほうがいいかもしれません。
例えば、クレーム「A+B+C+D」を作成して添削を依頼した後、クレーム「E+F」という添削結果が戻ってくることも考えられます。具体的には、添削者により、上位概念化や発明の捉え直しが行われて、全く異なったクレームが戻ってくることも考えらえます。
添削を依頼する依頼者によっては、(1)の捉え方よりも、(2)の文章化を学びたいという場合もあり、単に添削を依頼すると、上記のように、(1)の観点での結果が戻ってくる場合もあります。この場合は、文章化の良し悪しについての結果を得ることが出来ません。
このため、添削の依頼にあたっては、上記(1)、(2)の何れの観点で添削してもらうかを明確に伝えたほうがよろしいかと思います。
5. おわりに
クレームをある程度書けるようになるには、数をこなすことも重要です。その時間を確保することも大変だとは思いますが、少しずつでもいいのでトライしてみてはいかがでしょうか?
以上
(記:水戸 洋介)